不動産査定をした際に年末調整は必要なの?確定申告との違いなど基礎から解説!

不動産査定をした際に年末調整は必要なの?確定申告との違いなど基礎から解説!
不動産査定を受けたら年末調整で申請が必要?」
「不動産売却時に利益が出なかったら、確定申告は必要ないの?」

企業に勤めている人は確定申告に慣れていないため、納税制度についてわからないことが多いかもしれません。「不動産査定を受けたら年末調整や確定申告をしなければならないのか」と不安に思う人も、もしかしたらいるのではないでしょうか。

結論から言うと、不動産査定のみであればどちらも必要ありません。ただし、不動産を売却した翌年には確定申告が必須となります。

この記事では、年末調整・確定申告の違いや申告する時期などの基礎知識のほか、申告に必要な準備について詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで、年末調整や確定申告の準備に役立ててください。

不動産査定をしただけでは年末調整の額は変わらない

不動産査定は、不動産の「売却予想価格」を算出するものです。実際に不動産を売却して収支が発生したわけではないので、不動産査定をしただけでは年末調整に影響はありません。

また、不動産売却で必要なのは、年末調整ではなく「確定申告」になります。

まずは、よく耳にする「年末調整」と「確定申告」の違いや特徴について見ていきましょう。「いつ・誰がおこなうものなのか」や「おこなわないとどうなるのか」という疑問についても解説しますので、よく覚えておいてください。

年末調整とは所得税の過不足を調整する作業

年末調整とは、年間所得に対する所得税の過不足を正しく清算しなおすための手続きのことです。企業によって多少前後しますが、一般的には10月下旬から11月頃に開始され、1月下旬までの期間におこなわれます。

企業に勤めている場合は、毎月の給与から所得税が天引きされ、企業がまとめて納める仕組みになっています。給与から、この所得税や住民税・社会保険料などが天引きされた金額が、手取りとして支給されているのです。

しかし、この所得税は実際の所得に対する税額ではなく「概算された金額」で支払われています。そのため、その年の所得が確定したタイミングで年末調整をおこない、正しい課税金額を算出しなければなりません。

つまり、年末調整によって判明した納税額が過徴収であれば返還され、不足している場合は追加徴収される仕組みです。

また、年末調整は「所得税法」により、雇い主に対応義務が課せられています。年末調整を正しくおこなわなかった場合は、企業が以下の罰則を受けることになるでしょう。

従業員から正しく税を徴収しなかった場合
(年末調整をおこなわなかった場合)
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
追加の徴収額を納付しなかった場合
(年末調整をおこなったが過失があった場合)
10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金

確定申告とは所得を税務署に申告すること

一方、確定申告とは、年間所得を算出して所得税を計算し、税務署に納税額を申告する手続きのことです。年間所得は「その年の1月1日~12月31日までの売り上げから、諸経費を差し引いたもの」を指します。

日本では「申告制納税方式」という税制を採用しているため、個人が得た収入を正しく申告し、税を納めることが義務付けられています。

そのため、年間の所得金額から所得控除を差し引いた金額がプラスになる場合は、確定申告をおこなわなければならないのです。

確定申告は年に1回おこなう必要があり、原則翌年の2月16日~3月15日の間に報告・納税まで完了させる必要があります。

確定申告が必要なのは、以下に該当する場合です。

【確定申告が必要な人】

  • 個人事業主(フリーランスや自営業の人)で年間の所得が48万円以上の人
  • 不動産収入・株取引の所得がある人
  • 一時所得がある人(懸賞金・法人から受け取った金品など)
  • 退職所得があり、申告書未提出の人
  • 所得税の猶予を受けている人

給与所得とは別に副業で事業所得を得ている場合や上記の条件に該当する場合は、企業勤めであっても確定申告が必要になるので注意しましょう。当然、不動産を売却した場合は上記の条件に当てはまるため、確定申告が必要となります。

確定申告が必要な人が期限内に申告しなかった場合、以下の罰則・ペナルティを受けることになります。

【確定申告をしなかった場合のペナルティ】

  • 無申告加算税の徴収(最高税率20%)
  • 延滞税の徴収(最高税率14.6%)
  • 青色申告特別控除枠の減額(最大65万円から最大10万円に)
  • 青色申告の承認取り消し(2年連続で延滞した場合)

延滞税などが追加徴収されるだけでなく、青色申告における控除も受けられなくなるため、確定申告は正しく・期限内におこなう必要があるのです。

不動産を売却した場合には確定申告が必須

本来、会社勤めをしている人であれば会社で年末調整をおこなってくれるため、確定申告をする必要はありません。ただし、給与所得以外の所得がない場合に限ります。

不動産売却をおこなった年は給与以外の所得が発生しているため、自分で確定申告をしなければなりません。

不動産売却によって得た所得は「譲渡所得」に分類され、他の所得と分離して税額計算する「分離課税」の扱いとなります。

そのため、普段は確定申告していない人であっても、税務署から届いた申告書に譲渡所得を記入し、提出する必要があるのです。

不動産売却して利益が出てない場合も確定申告は必要

不動産を売却した場合は、利益の有無にかかわらず確定申告をする必要があります。

まずは、不動産売買で利益が出たかどうかを把握しましょう。売却益は、不動産を売却した金額から、不動産購入時の「取得費」と、売却にかかった「譲渡費用」を差し引くことで求められます。

詳しくは後述しますが、この金額がプラスになれば利益が発生し、マイナスであれば譲渡損失が発生していることになるのです。税法上では、売却益が出なければ確定申告の必要はないとされています。

しかし、確定申告をすることで減税措置や還付金を受けられる可能性があります。そのため、不動産売却で利益が出ていないケースであっても、確定申告することをおすすめします。

利益がある場合は譲渡所得の確定申告が必須

不動産を売却して利益が発生した場合は、確定申告をおこない「譲渡所得税」を納める必要があります。

先述したように、物件・土地などの不動産売却時の譲渡所得は、「分離課税」の対象です。給与所得などのその他所得とは分離し、単体で算出しなければなりません。

また、譲渡所得税は「所得税と住民税の総称」で、売却した不動産の所有期間によって徴収額が変動します。ただし、特例制度が適用される場合は、必ずしも課税対象になるというわけではありません。

譲渡所得税とその控除・特例については後述しますので、気になる人は併せて覚えておきましょう。

損失が出たら損益通算のために確定申告が必須

不動産の売却により譲渡損失が発生した場合は、「損益通算」のために確定申告をおこなうことをおすすめします。

損益通算とは、利益・損失を合算することで、申告する利益を少なくできる制度のことです。赤字所得を他の黒字所得(給与所得など)から差し引く損益通算をおこなえば、納税額が安くなる特別控除が受けられます。

さらに、1度で控除しきれない場合でも、譲渡損失が発生した翌年以降の3年間にわたって「繰越控除」することが可能です。

ただし、損益通算ができるのは、不動産・事業・譲渡・山林の4つの所得のみになります。すべての所得で損益換算できるわけではないので、注意しましょう。

不動産査定・売却の後の年末調整や確定申告の時期

先述した通り、不動産査定を受けただけで売却していない場合は、年末調整・確定申告ともに例年通りで問題ありません。また、不動産売却後の年末調整も特に影響がないものになります。

ただし、不動産売却後は確定申告が必要です。譲渡所得が発生した翌年の2月上旬~3月中旬にかけて、申告・納税をおこないます。このとき納める金額は、住民税以外の所得税・復興特別所得税などです。

その後、5月頃に住民税の上乗せ分を支払うための納付書が届きます。4期にわたって納付していきますが、上乗せされるのは売却した翌年のみです。

不動産査定・売却の後の年末調整や確定申告で準備すべきこと

不動産売却後の年末調整は、例年通りおこなえば問題ないため、特別何か準備する必要はありません。しかし、確定申告はしなければならず、申告に向けていくつか準備しておくべきことがあります。

不動産売却後の確定申告に必要なことは、以下の通りです。

【不動産売却後の確定申告の準備】

  • 必要書類の準備
  • 不動産売却の税金算出
  • 控除・特例の利用可否

確定申告の準備には、手間と時間がかかるものです。慣れていない場合は、申告に必要な書類準備にてこずってしまうかもしれません。申告期間には明確な期限があるため、早めに準備しておくことをおすすめします。

確定申告で必要な書類を準備する

不動産売却の確定申告に必要な書類は、「行政施設で入手するもの」と「自分で用意するもの」の2種類があります。

必要書類とその取得場所の一覧は、以下をご覧ください。

必要書類 入手場所
確定申告書の用紙 税務署
譲渡所得の内訳書
戸籍の附票 売却した不動産のある市区町村役場
売却した不動産の全部事項証明書 法務局
売買契約書・建物請負契約書(写し) 不動産取得時
一般媒介契約書
仲介手数料の領収証(写し)
売却にかかった諸費用の領収証(写し)
(登記費用・測量費用など)
本人確認書類
源泉徴収票 勤務先または日本年金機構

また、企業に勤めている人や公的年金受給者は、源泉徴収票の原本も用意しておきましょう。源泉徴収票とは、「年間所得と納付した所得税額を記した書類」のことです。

給与所得者に発行され、基本的に年末~1月頃に勤務先から支給されるものになります。年金受給者の場合は、日本年金機構より1月下旬頃に送付されるので、紛失しないよう保管しておきましょう。

行政の施設で入手するもの

行政施設で入手できる書類の詳細は、以下の通りです。

必要書類 内容
確定申告書の用紙 申告書B様式:所得の種類に関わらず、だれでも申告できる書類
申告書第三表(分離課税用):分離課税対象所得がある場合
譲渡所得の内訳書 確定申告書付表と計算明細書:売却した不動産に関する情報を記入する書類
戸籍の附票 戸籍に記載された人の住所異動履歴を記録した書類
(売却から2か月経過後のもの)
売却した不動産の全部事項証明書 不動産登記簿の内容が正しいことを証明する書類
(所有権移転・抵当権の設定や抹消などの履歴)

上記書類は各行政施設で入手し、申告前に必要事項を記入しておかなければなりません。

確定申告書の用紙は2種類ありますが、譲渡所得の申告はどちらでおこなっても良いとされています。税務省で直接取得することもできますが、国税庁公式ホームページの「確定申告書等作成コーナー」からもダウンロード可能です。

ただし、マイナンバーカードがない場合は、税務省で直接本人確認をおこない、ID・パスワードを発行してもらう手間がかかるため、注意しましょう。確定申告は余裕を持っておこなうことをおすすめします。

自分で準備する書類

自分で準備する書類は、主に売却した不動産に関するもので、契約書や領収証のコピーになります。

自分で準備する必要書類とその詳細については、以下をご覧ください。

必要書類 内容 取得タイミング
売買契約書の写し
(2種類)
不動産購入時の売買契約書(取得費用計算のため)
不動産売却時の売買契約書(譲渡価格証明のため)
不動産取得時・譲渡時
建物請負契約書の写し 施工会社と締結した際の契約書 住宅建築時・リフォーム時
媒介契約書 不動産会社と媒介契約を締結した際の契約書 売却活動時
仲介手数料の領収証の写し 不動産会社に支払う仲介の成功報酬 不動産取得時・譲渡時
売却にかかった諸費用の領収証の写し 登記費用・測量費用など 売却活動時
本人確認書類の写し マイナンバーカード・免許証など
源泉徴収票 年間所得・納付所得税額の証明 年末~1月

上記書類は、確定申告の申請書類と一緒に提出するものになります。不動産売却時の書類だけでなく、取得時のものも必要になるため、紛失しないよう十分気をつけてください。

不動産を購入・取得した際の書類がなかった場合でも、確定申告自体をおこなうことは可能です。ただし、支払う税金が増えてしまう可能性があります。

不動産売却の税金を計算しておく

不動産の売却金額にいくら課税されるのかを事前に概算しておくことも重要です。

不動産売却時に課税される「譲渡所得」の金額算出には、以下の計算式を利用します。

売却益(課税譲渡所得)=売却金額-取得費用-譲渡費用

譲渡所得は、不動産の売却金額がそのまま課税対象となるのではありません。不動産を取得した時の費用や、譲渡するまでにかかった諸費用などの「経費」を差し引いて残ったものに課税されます。

この算出した譲渡所得の金額をもとにして、譲渡所得税を算出しましょう。計算式は、以下の通りです。

譲渡所得税=売却益(課税譲渡所得)×課税所得税の税率

課税所得税の税率は、売却した不動産の所有期間によって異なるのが特徴です。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を経過する場合は「長期譲渡所得」、5年未満の場合は「短期譲渡所得」に分類されます。

2つの譲渡所得にかかるそれぞれの税率は、以下の通りです。

短期譲渡所得
(5年以下)
長期譲渡所得
(5年以上)
軽減税率の特例
(10年以上)
所得税 30% 15% 10%
住民税 9% 5% 4%
合計した税率 39% 20% 14%

売却した不動産の所有期間が10年を超えており、「住居用財産の軽減税率の特例」に該当する場合には、課税率が低くなるでしょう。

控除や特例が適用できるか調べる

さらに、確定申告の前には、税金の控除や軽減税率の特例などが適用されるのかをチェックしておけると良いでしょう。不動産売却に関連する特例には、以下のようなものがあります。

【不動産売却に関して利用できる特別控除・特例】

  • 3,000万円特別控除
  • 特定居住用財産の買換え特例
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除

特に、譲渡損出が出た場合は、この特例や控除を利用するメリットが大きいため、事前に確認しておくことが重要です。詳しく紹介していきますので、該当するかよくチェックしてみてください。

3,000万円の特別控除

居住用財産、つまりマイホームを売却した際には、所有期間に関係なく特別控除となります。譲渡所得のうち「3,000万円までは課税されない」という措置が適用されるのです。

この特別控除が適用となるのは、以下の場合になります。

【3,000万円特別控除が適用される条件】

  • 売却した不動産に売り主自身が居住していたことが証明できる
  • 親族間の売買ではない
  • 売却年から過去2年以内に同特例・譲渡損失の特例を受けていない

住んでいた物件を取り壊した場合でも適用可能ですが、その際は別途追加された条件もクリアしている必要があります。

また、売り手と買い手が夫婦・親子などの親族である場合には適用されないので、注意しましょう。別荘や娯楽目的など、居住目的でない家屋も適用外となっています。

特定居住用財産の買換え特例

「特定居住用財産の買換え特例」とは、住居の買換えにおいて、譲渡損失が発生してしまった際に活用できる特例のことです。

損失分を給与所得などから控除でき、一度ですべて控除しきれない場合には、翌年から3年間繰越控除されるメリットがあります。下記は、適用条件の例です。

【特定居住用財産の買換え特例が適用される条件例】

  • 住居の売却が買換え目的であること
  • 売却する住居を10年以上所有していること
  • 売却金額が1億円以下であること
  • 買換える土地面積が500㎡以下・建物の床面積が50㎡以上であること
  • 買い替えた年の翌年12月31日までに居住する予定があること

特定居住用財産の買換え特例は、2019年12月31日までに住居を買い替えた場合に適用されるものです。そのため、それ以降の買換えには適用されないものになるので、注意しましょう。

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

2019年12月31日までの不動産売却で、売却価格が住宅ローン残高よりも少なく、「譲渡損失」が発生してしまった場合に適用できるのが、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」です。

損失分を給与などほかの所得から控除でき、控除しきれない場合には翌年から3年間の繰越控除が認められています。特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用条件は、下記の通りです。

【特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除が適用される条件】

  • 住居目的の不動産売却であること
  • 5年以上所有している不動産を売却したこと
  • 住まなくなってから3年以内に売却していること
  • 売買契約締結の前日時点で、10年以上の住宅ローンが残っていること

ただし、繰越控除は納税免除ではありません。あくまでも、支払期限の先延ばしができる特例であるということを覚えておきましょう。

まとめ

不動産査定をした年の年末調整は、例年通りおこなえば問題ありません。ただし、不動産を売却した翌年は、2月上旬~3月中旬の期間内で確定申告をおこない、譲渡所得税を納める必要があります。

また、確定申告は不動産売却で利益が出た場合だけでなく、損失が出た場合であってもおこなうべきです。適用要件に該当すれば、特例による納税控除や減税措置などを受けられます。

期限内に確実に確定申告をおこなうためにも、早めに情報収集や必要書類の準備をしておきましょう。

プロフィール
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。