【不動産売却の必要書類】それぞれの取得方法や提出時期、チェックリストをご紹介

【不動産売却の必要書類】それぞれの取得方法や提出時期、チェックリストをご紹介
不動産を売却する際には、さまざまな書類が必要になります。不動産の売却を決めたら、なるべく早めに必要書類をチェックしておきましょう。書類の準備に時間がかかると売却までの時間も長くなるため、必要書類を事前に把握しておくことは大切です。

今回は、不動産売却における必要書類をシーン別に紹介します。どのタイミングでどのような書類が必要かがわかるので、不動産売却を考えている人はぜひご覧ください。

不動産の売却を不動産会社に依頼する際に必要な書類

不動産を売却するとき、多くの人が個人売買ではなく、不動産会社に依頼をします。不動産会社は売主からもらった書類をもとに販売活動をするため、さまざまな書類の提出を求められるでしょう。

まずは、不動産の売却を不動産会社に依頼する場合に必要となる書類を紹介します。スムーズに不動産を売却するためにも一度確認しておきましょう。

不動産の売却依頼で必ず必要な書類

不動産の売却で必ず必要となる書類は、以下の6つです。不動産会社に売却を依頼するタイミングで必要となるため、なるべく早く用意しましょう。

【不動産の売却依頼で必ず必要な書類】

  • 登記済権利証・登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書
  • 測量図・境界線確認書
  • 建築確認済証
  • 間取り図
  • 維持費用書類と管理規約

どの不動産会社からも求められる書類のため、不動産の売却を決めたときに準備しておくと、取引がスムーズに進みます。それぞれの書類の詳細や入手場所について詳しく説明するので、チェックしてください。

登記済権利証・登記識別情報

登記済権利証・登記識別情報は、不動産の所有者が誰であるのかを証明してくれる書類です。不動産の売却では、基本的に売主が所有者でなければなりません。家族であっても不動産を勝手に売ることは不可能です。

不動産の持ち主が明確にわからないと売却が進まないため、登記済権利証か登記識別情報を用意してください。

この書類は、不動産を所有したときに法務局から発行されています。平成17年以前に所得した場合は「登記済権利証」、それ以降に所得している時は「登録識別情報」という名前です。

固定資産税納税通知書

固定資産税納税通知書は、固定資産税の金額が記載されている書類です。毎年1月1日の時点で不動産を所有している人に対して、固定資産税は課せられます。納税通知書が届くのは3~6月頃です。

不動産の売却時期によっては、固定資産税納税通知書が届いていないこともあるでしょう。その場合は、自治体の資産税課で発行できます。紛失した場合も同様です。

測量図・境界線確認書

測量図・境界線確認書には、土地の面積や境界線などの土地に関する情報が記載されています。測量図は、測量を依頼した会社から受け取っているはずです。

しかし、古い物件になると測量自体がおこなわれていないケースもあります。また、測量時期が古いと正確な情報が分からないため、新しく測量することになるでしょう。

境界線確認書についても、古い物件になると隣地との境界がない場合があります。トラブルを防ぐために境界は重要となるため必ず確認しましょう。

測量図や境界線確認書がない場合は、不動産売却の相談の段階で不動産会社に伝えておくのがおすすめです。

建築確認済証

建築確認済証は、建物が建築基準法を守って設計されていることを証明する書類です。建物の売却の際に必要となり、土地のみの売却では必要ありません。

建築確認済証は、家が建築された後に発行されています。家を購入したときの書類と一緒に保管しているケースが多いので探してみてください。

もし建築確認済証を失くしていても、問題はありません。自治体の窓口に行って、「台帳記載事項証明書」を発行してもらえば、代わりの書類として使用できます。

間取り図

間取り図は、物件情報を公開するときに使用されます。購入者は物件がどのような間取りであるかを確認するため、間取り図は売却活動において重要な書類となるでしょう。

基本的に間取り図は、物件購入時に受け取っています。しかし、紛失しているケースも少なくありません。紛失していても不動産の売却はできますが、提出を求められる場合が多いので、用意できない際は不動産会社に相談してください。

維持費用書類と管理規約

維持費用書類と管理規約は、マンションの売却に必要な書類です。戸建てや土地の売却の際には、必要ありません。

維持費用書類と管理規約は、マンションの管理会社が保有しています。基本的に不動産会社が手配してくれるので、自分で用意する必要はありません。

不動産の売却依頼であると良いもの・書類

不動産の売却依頼をする際、用意することで取引がスムーズに進む書類があります。以下の4つの書類を用意しておくのがおすすめです。

【不動産の売却依頼であると良いもの・書類】

  • 地盤調査報告書
  • 耐震診断報告書とアスベスト使用調査報告書
  • 住宅ローンの残高証明書
  • 購入時の重要事項説明書やパンフレット

必須書類ではありませんが、用意できるように確認しておきましょう。調査などに費用がかかるケースもあります。

地盤調査報告書

地盤調査報告書は、土地の地盤を調査した結果が記載されている書類です。空き地として長年放置されていた土地は、地盤が弱くなっており建物が傾いてしまうなどの問題が発生することがあります。

地盤調査報告書があれば、土地の強度が証明できるので購入者が安心しやすいです。不動産が売却しやすくなるので、用意しておくメリットが大きいでしょう。

耐震診断報告書とアスベスト使用調査報告書

耐震診断報告書は、建物の耐震性を調べた結果が記載されている書類です。地震が多い日本において、耐震強度は重要な判断ポイントになります。特に、昭和56年5月31日までに建築確認申請を受けた物件は、耐震基準が以前のものであるため(旧耐震)、耐震性が高いかどうかを調べて新耐震基準並みに頑丈であると説明できれば、物件の価値を高く証明することができます。

アスベスト使用調査報告書は、建物を建築したときにアスベストを使用していたかがわかる書類です。平成18年に建築基準法が改正されたことにより、アスベストの使用が規制されました。平成18年以前の建物を売却するときは、アスベストが使用されている可能性があるため、使用状況が確認できると安心して購入してもらえるでしょう。書類がない場合は、別途調査費用がかかります。

住宅ローン残高証明書

住宅ローン残高証明書は、売却する時点でローンが残っている場合に必要となります。すでに住宅ローンを完済しており、抵当権が解除されていれば必要ありません。

住宅ローンが残っている場合、物件の売却と同時に一括返済を求められます。ローン残高以上の価格で売却できれば問題ありませんが、売却価格が下回る場合は資金調達も必要です。

住宅ローン残高証明書は毎年自宅に届いており、紛失していても銀行で再発行できます。

購入時の重要事項説明書やパンフレットなど

購入時に入手した重要事項説明書やパンフレットは、できる限り用意しておくのがおすすめです。これらの書類には、物件の情報が記載されています。セールスポイントなどが載っていることも多く、販売のときに役立つでしょう。

重要事項説明書やパンフレットは、その他の書類と一緒に自宅に保管しているケースが多いです。他にも物件の販売促進に役立ちそうな書類があれば、不動産会社に伝えましょう。

不動産売買契約を締結する際に必要な書類

不動産の買主が決まれば、売買契約を締結します。売買契約時には、以下の4つの書類が必ず必要です。書類が足りないと売買契約が結べないため、あらかじめチェックしておきましょう。

【不動産の売買契約を締結する際に必要な書類】

  • 収入印紙
  • 実印・印鑑証明書・身分証明書
  • 登記済権利証
  • 固定資産税評価証明書

ここでは、それぞれの書類の詳細や入手場所を紹介します。

収入印紙

収入印紙とは、売買契約書に課せられる印紙税を支払うために発行される証票です。収入印紙の金額は売却価格によって異なります。主な入手先は、以下の通りです。

【収入印紙が販売されている場所】

  • 郵便局
  • 法務局
  • 役所
  • 金券ショップ
  • コンビニ

コンビニでも購入できますが、高額になると取り扱っていないこともあるため、郵便局や法務局を利用するのがおすすめです。電子契約の場合は不要となります。

実印・印鑑証明書・身分証明書

売買契約書に捺印するために必ず実印が必要となります。また、捺印した印鑑が実印として登録されていることを証明するために、印鑑証明書も必要です。

実印は市区町村の役場に登録した印鑑であり、自分で保管しています。紛失してしまった場合は再登録が必要なので、注意しましょう。ただし、電子契約の場合は不要です。

印鑑証明書は印鑑登録証というカードを持って役所に行けば、入手できます。また、マイナンバーカードを登録している場合は、コンビニのコピー機でも入手可能です。

身分証明書は免許証やパスポートを持参しておけば、問題ありません。

登記済権利証・登記識別情報

登記済権利証・登記識別情報は、不動産の所有者を確認するために、必要な書類です。登記済権利証か登記識別情報がなければ売買契約を締結できないので、必ず用意しましょう。

登記済権利証も登記識別情報も、法務局から名義人に公布されています。平成17年以前に所得している場合は登記済権利証、それ以降に所得している時は登録識別情報を用意してください。

固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書は、毎年4~6月に自宅に郵送されています。固定資産税は、毎年1月1日の時点で固定資産を所有している人に対して課税されます。その年の途中で固定資産を売却する場合、月割り分の支払いを買主に求めることが可能です。

月割り分の固定資産税を計算するために、固定資産税評価証明書は必要となります。仲介業者によってあらかじめ計算されるケースが多いですが、固定資産税を証明する書類なので、売買契約の際も必要です。

不動産の引き渡しの際に必要な書類

不動産の売買契約が締結したら、引き渡しに移ります。引き渡しの際にもさまざまな書類が必要です。ここでは、不動産の引き渡しの際に必要な書類を、以下の2つに分けて紹介します。

【紹介する書類】

  • 必ず必要な書類
  • あると良いもの・書類

引き渡しをスムーズに進めるためにも、確認しておきましょう。

不動産の引き渡しで必ず必要な書類

不動産の引き渡しでは、以下の4つの書類が必ず必要となります。

【不動産の引渡しで必ず必要な書類】

  • 実印・印鑑証明書・身分証明書
  • 登記済権利証
  • 固定資産税評価証明書
  • 通帳・銀行印

この4つの書類を用意していないと、不動産の引き渡しができません。契約が取り消しになることはほぼありませんが、気持ちの良い取引をするためにも忘れずに用意してください。

実印・印鑑証明書・身分証明書

不動産の引き渡しの際にはいくつかの書類に押印するため、実印を持参しなければいけません。もし紛失している場合は、事前に役所で実印の再登録をおこなってください。

それと同時に、印鑑証明書の提出も求められます。基本的に発行から3か月以内のものが必要なので、不動産の引き渡し日が決まったら、役所で取得しましょう。

また、所有権移転登記を司法書士に委任する際に、本人確認をするために身分証明書も必要です。運転免許証やパスポートなどの顔写真つきのものを用意してください。

登記済権利証・登記識別情報

不動産の引き渡しは、司法書士が法務局にて登記済権利証または登記識別情報とその他の書類を提出することで完了します。そのため、不動産の引き渡しの際にも、登記済権利証・登記識別情報が必要です。

登記済権利証・登記識別情報に記載されている名前や住所が印鑑証明書に記載されているものと異なる場合は、住民票や戸籍謄本も必要になります。

固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書は、不動産売却の際におこなわれる所有権移転登記手続きの登録免許税を計算するために使用されます。毎年4~6月に自宅に郵送されており、紛失していても役場で取得することが可能です。

一般的に、不動産売買の際の所有権移転手続きは、司法書士に依頼します。司法書士から提出を求められるため、事前に準備しておきましょう。

通帳・銀行印

不動産の売却において、代金の支払いは基本的に銀行振り込みとなります。金額が大きくなるケースがほとんどなので、現金でのやり取りはほぼありません。

そのため、通帳・銀行印が必要になります。あらかじめ振込先の銀行名・支店名・口座番号が分かるページをコピーしていくのもおすすめです。

不動産の引き渡しであると良いもの・書類

不動産の引き渡しの際に以下のものを用意しておけば、よりスムーズに手続きを進められます。

【不動産の引渡しであると良いもの・書類】

  • 売却物件の鍵一式
  • 買主に引き継ぐ資料

売主にとっても買主にとっても手続きがスムーズに進むのは良いことです。無理に用意する必要はありませんが、できるだけ引き渡しの際に準備しておきましょう。

売却物件の鍵一式

売却する物件の鍵はすべて持参しましょう。玄関だけでなく勝手口の鍵も必要となります。また、売却する物件に物置などが含まれる場合は、その鍵も必要です。

しかし、物件の鍵を一部紛失していることも珍しくありません。特に、普段勝手口を利用しない場合は、紛失していることが多いです。もし鍵を紛失している場合は、不動産会社にそのことを伝えて書類に記載しましょう。

買主に引き継ぐ資料

引き渡しの際には、物件のパンフレットや建築済み確認証、測量図などの書類を用意しておくのがおすすめです。買主に資料を渡しておくことで、売却後のトラブル防止につながります。

また、あとから書類を求められることもあるため、早めに渡しておきましょう。

不動産売却に必要な書類のチェックリスト

不動産売却に必要な書類を、チェックリストにまとめました。不動産の種類によって必要な書類は異なるため、ぜひチェックリストを活用してください。

項目 入手場所 戸建て マンション 土地
登記済権利証 売主保有
固定資産税納税通知書 市役所
測量図 測量士 ×
境界線確認書 土地家屋調査士 ×
間取り図 売主保有
維持費用書類 管理会社 × ×
管理規約 管理会社 × ×
地盤調査報告書 測量士・土地家屋調査士 ×
耐震診断報告書 建築士 ×
アスベスト使用調査報告書 建築士 ×
住宅ローン残高証明書 銀行
重要事項証明書 売主保有 ×
パンフレット 売主保有 ×
収入印紙 郵便局・法務局
印鑑証明書 市役所
身分証明書 売主保有
住民票 市役所

※〇=必須、△=推奨、×=不要

不動産売却の書類に関するよくある質問

初めての不動産売却ではわからないことが多く、手探り状態になる人が多いです。また、売却が完了するまでは不安だという人もいるでしょう。

ここでは、不動産を売却する人の不安を少しでも取り除くために、よくある質問に回答します。チェックして悩みを少しでも減らしてください。

不動産売却後の確定申告で必要な書類は?

不動産の売却後は、確定申告をおこなわなくてはなりません。その際にも多くの書類が必要となります。以下に確定申告で必要な書類をまとめたので、チェックしてください。

項目 入手場所 内容
確定申告書B様式 税務署 申告内容を記載する書類
分離課税用の申告書 税務署 不動産所得を記載する書類
譲渡所得の内訳書 国税より郵送される 不動産の売却額・購入額・経費・代金受け取り状況を記載している書類
登記簿謄本 法務局 不動産の所在地・面積・所有者が記載された書類
不動産を所得した時の資料 不動産会社 売買契約書や仲介手数料の領収書
不動産を売却した時の資料 不動産会社 売買契約書や仲介手数料の領収書

基本的に税務署や法務局で入手できる書類です。しかし、不動産を所得・売却した時の資料は確定申告時には自分で保管しています。売却が完了したからと捨てるのではなく必ず保管しておきましょう。

法人が不動産を売却する際に必要な書類は?

個人ではなく法人が不動産を売却する際には、必要な書類が異なります。以下に、法人の場合に必要となる書類をまとめました。

項目 入手場所 内容
登記済権利証 所有者が保管 不動産の所有者を証明する書類
法人の実印 会社で保管 法人設立時に作成している
法人の印鑑証明書 管轄の法務局で所得 発行から3か月以内のもの
法人の登記事項証明書 法務局で所得 発行から3か月以内のもの
固定資産税納税通知書 市区町村役場で入手 固定資産の評価額が記載された書類
代表or担当者の身分証明書 個人が保有 免許証などの顔写真つきのもの

基本的には、個人で必要な書類が法人のものに変わるだけです。法務局や役場で所得できるものなので、用意するのも難しくないでしょう。

まとめ

今回は、不動産売却で必要な書類について紹介しました。不動産を売却する際は、普段目にしないさまざまな書類を用意しなければならず、準備するだけでも手間がかかります。書類を利用するギリギリのタイミングではなく、事前に準備を始めてスムーズな手続きをしましょう。

また、書類の紛失やわからないことがあったら、不動産の担当者に確認しておくのがおすすめです。この記事を参考に、不動産売却の準備を進めていきましょう。

プロフィール
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。