土地売却における確定申告書類の書き方!実際に書くのは3つの書類だけ?

土地売却における確定申告書類の書き方!実際に書くのは3つの書類だけ?
「持っている土地を売却したけれど、その後の確定申告のやり方がわからない」
「確定申告に必要な書類は何?」

初めて土地を売却した場合、上記のような悩みを抱える人もいるのではないでしょうか。土地売却をした場合、確定申告が必要なケースとそうでないケースがあり、初めての人だとよくわからないと感じることもあるでしょう。

そこで今回は、土地を売却した際に必要となる確定申告書類やその書き方について、解説していきます。

土地を売却したら確定申告の必要はある?

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土地を売却した場合には、必ず確定申告が必要なわけではありません。状況によっては、確定申告をする必要がないこともあります。確定申告の有無は、以下の通りです。

【状況別確定申告の有無一覧表】

税金の特例の利用 確定申告
売却によって利益が発生した
売却によって損失が発生した

上記の表の「利益」とは、譲渡所得が出ていることを指しています。譲渡所得とは、「譲渡価格-譲渡費用-取得費」で算出される、いわば「売却益」のことです。

【譲渡所得の計算方法の言葉の意味】

譲渡価格:土地を売却した金額

譲渡費用:仲介手数料等や建物取り壊し費用など、売却に必要だった経費

取得費:土地を購入したときの金額

この計算をおこなって、譲渡所得がプラスになっている場合には、原則確定申告をおこなう必要があります。

一方、売却益が発生していない(損失が発生している)場合は、「税金の特例利用」の有無によって確定申告の要・不要が決まります。

税金の特例とは、会社からの給与や事業の所得などの土地売却益以外の所得と相殺することで、所得税や住民税の負担を軽減できる制度のことです。この制度を活用できる場合には、確定申告は義務ではありませんが、申告することで減税効果が見込めます。

このように、基本的には確定申告は必要ですが、損失があるものの税金の特例を利用しないケースでは、特に何もしなくても良いのです。

土地売却にかかる確定申告の必要書類

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土地の売却にかかる確定申告をする場合には、準備しなくてはいけない書類が多くあります。必須のものもあれば、特例を受ける場合に必要な書類など、必要度はさまざまです。

この章では、必須書類と特例のための書類を分けて、それぞれ解説していきます。

必ず必要になる8つの書類

土地を売却して確定申告をおこなう際に必ず必要なのが、以下の8つの書類です。

【土地売却時の確定申告で必須の書類】

必要書類 入手場所
確定申告書 税務署・国税庁HP
確定申告書第三表 税務署・国税庁HP
確定申告書付表兼計算明細書 税務署・国税庁HP
住民票の写し 土地がある場所の自治体の役所
本人確認書類 自分で準備
土地売却時の売買契約書の写し 売却時の不動産会社
土地購入時の売買契約書の写し 購入時の不動産会社
諸経費の領収書 もらった際に保管して準備

ここに記載されている8つの書類が1つでも不足していると、必要な数字が記載できないなど、正しく確定申告をおこなうことができなくなってしまいます。

それぞれ入手場所も異なるため、漏れのないように用意しましょう。

特例を利用する場合の必要書類

土地を売却する際には、以下のように税金控除の特例を受けられるケースもあります。

  • 3,000万円特別控除
  • 相続税の取得費加算の特例
  • 所有期間が10年以上の場合の軽減税率の特例
  • 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これらの特例や控除を受けるために、別途準備しておくべき書類を解説していきます。

3,000万円特別控除の特例

3,000万円特別控除とは、決められた条件を満たした物件を売却したときに、譲渡所得の金額のうち3,000万円までが非課税となる制度です。この控除を受ける条件は、以下の通りです。

【控除を受ける条件】

  1. 下記のいずれかを満たすマイホームである
    →現在主に住んでいる物件
    →転居している場合は3年後の年末までの売却
    →土地の売買契約が解体から1年以内で、土地の賃貸をしていない
    →単身赴任の場合は配偶者が住んでいる
  2. 物件を買うのが特殊な関係ではない
  3. 売却した2年前までに控除の特例を受けていない
  4. 売った年から2年前までにマイホームの買い替えや特例の適用を受けていない
  5. 売却した不動産に関して、特例の適用を受けていない
  6. 災害によって売却する場合、転居から3年後の年の年末までの売却

上記6つの条件をすべて満たすことで、控除を受けることができます。また、3,000万円特別控除を受けるためには、確定申告が必要です。

控除の詳細については、国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を確認しましょう。

相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例とは、相続によって土地を受け取ってから3年10か月以内に売却した場合に利用できる制度のことです。この特例を受けるための要件は、以下の3つです。

  • 相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した個人
  • 財産を取得した人が相続税を支払っている
  • 相続した財産の譲渡が相続開始から3年10か月以内

この制度を利用すると、譲渡所得の計算をおこなうときに取得費に相続税を加えることができるため、その分所得の金額を減らすことができるようになるのです。

この特例を受ける場合、税務署か国税庁のウェブサイトで相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を取得して、確定申告書に添付しなければいけません。

また、相続税の取得費加算の特例の詳細については、国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」に記載しているので、確認しましょう。

所有期間が10年以上の場合の軽減税率の特例

この制度は、その土地を10年以上所有していた場合に、譲渡所得に軽減税率が適用されるというものです。先ほど紹介した「3,000万円の特別控除の特例」と併用が可能であるため、組み合わせることで減税効果を高めることができます。

また、この10年超所有軽減税率の特例を利用するためには、確定申告の時に「土地の登記事項証明書」の添付が必要です。法務局で入手する必要があるので、忘れずに準備しておくようにしましょう。

10年超所有軽減税率の特例については、国税庁の「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」に詳しく記載しています。併せて確認しましょう。

居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは、土地を売却したときに損失が出てしまった場合、給与所得や事業所得などの他の所得と相殺して、支払う税金を軽減するという方法です。

この特例を受けるためには、下記の4つの書類の提出が必要となります。

必要書類 入手方法
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書 国税庁HP
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 国税庁HP
売却物件の登記事項証明書 法務局
売却物件の住居借入金の残高証明書 借入している金融機関

土地売却をした際の確定申告書類を書く前に準備するもの

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土地売却をした際の確定申告書類を書くためには、事前に以下の2点をおこないましょう。

  • 自分で書く書類を明確にする
  • 所得税を計算しておく

それぞれについて解説していきます。

自分で書かないといけない3つの書類を知っておく

先ほどの章で解説したとおり、確定申告をする際に準備する書類は、沢山あります。しかし、実際に自身で記入する書類は、以下の3つだけです。

  • 確定申告書B
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)

これらの書類はすべて、国税庁のウェブサイトから取得することができます。ウェブサイトには、書き方のマニュアルや解説も公開されているため、一緒に確認しておきましょう。

所得税を計算しておく

確定申告書に手書きで記入する場合には、所得税の金額を自分で計算する必要があります。この計算をおこなうには、譲渡所得の金額を計算しておく必要があるため、事前に書類を準備しておきましょう。

また、売却した時点での所有期間によって税率が異なるので、注意が必要です。

【所有年数ごとの所得税率】

  • 短期譲渡所得(5年以下):所得税率30.63%+住民税率9%
  • 徴期譲渡所得(5年以上):所得税率15.315%+住民税率5%

また、土地の所有年数が10年以上だった場合には、軽減税率の特例を利用できます。そのため、先ほどよりもさらに低い税率が適用されるので、ぜひチェックしておきましょう。

【10年以上の軽減税率の特例】

  • 6,000万円以下:所得税率10.21%+住民税率4%
  • 6,000万円超:所得税率15.315%+住民税率5%

土地売却の際の確定申告書類の書き方

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土地売却の確定申告をおこなう際には、以下3つの書類への記入が必要となります。

【確定申告で記入する書類】

  • 確定申告書
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)

それぞれの具体的な書き方について、確認しておきましょう。

確定申告

確定申告は、税務署か国税庁のウェブサイトから取得することができます。記入する項目と内容は、以下の通りです。

【確定申告の記入項目】

記入項目 内容
個人情報 名前・住所・個人番号・生年月日等
収入金額 給与や事業所得、不動産等
所得金額 収入から控除等を引いた額
社会保険料控除 社会保険料の金額
生命保険料控除 生命保険料の金額
地震保険料控除 地震保険料の金額
配偶者所得控除 配偶者がいる場合に受けられる控除金額
所得金額合計 全ての所得を合算した金額
所得から差し引かれる額合計 所得から引かれる金額
第三表86 確定申告書Bの第三表の86の数字
再差引所得税額(40) 申告書38番-39番
復興特別所得税額(41) (40)×2.1%
所得税及び復興特別所得税の額(42) (40)+(41)
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額(45) (42)-(43)-(44)
所得税及び復興特別所得税の第3期分の税額(47) (45)-(46)

内容によっては、確定申告書第三表への記載をおこなわないと埋められない項目もあるので、注意しましょう。

また、確定申告書には、第一表と第二表もあります。社会保険料控除等の詳細や源泉徴収税額は第二表への記載も必要となりますので、忘れずに確認が必要です。

自分で記入するのが難しいと感じる場合には、国税庁の確定申告書作成マニュアルを利用することをおすすめします。

確定申告書第三表

確定申告書第三表とは、土地や建物の譲渡をした場合(分離課税の所得がある場合)に提出しなければいけない書類です。

確定申告書第一表の収入金額・所得金額・所得から差し引かれる金額の欄などは、第一表に書く内容と被っているので、まずは転記しておきましょう。

その後、計算明細書を作成します。計算明細書とは第三表の提出にあたって、申告する所得の内容に合わせて提出する必要のある計算の内訳を詳細に記載した書類のことです。第三表はこの計算明細書を先に制作することによって、効率良く作成することが可能になります。

計算明細書の制作方法に関しては国税庁の「明細書・計算明細書等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」で詳しく解説されているので、確認しておきましょう。

計算明細書の作成が完了したら、あとはその内容を第三表に転記するだけで完成です。

確定申告付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)

土地を売却した場合には、「譲渡所得の内訳書」を作成して提出する必要があります。この書類は、国税庁のウェブサイトで取得することが可能です。

譲渡所得の内訳書には、第一表~第三表があるので、それぞれ見ていきましょう。

【第一表の記入項目】

  • 現住所
  • 氏名
  • 電話番号
  • 職業

令和3年1月1日以後に転居した場合には、現住所の下にある括弧内に、前の住所も記載してください。

【第二表の記入項目】

  • 所在地:譲渡・売却した住所
  • 売却地の詳細:種類や広さ
  • 利用状況:売却直前の利用状況
  • 売買契約日
  • 引き渡した日
  • 共有者の氏名・住所
  • 譲渡先の氏名・住所
  • 売却金額
  • 手付金や残金

この内容を記載するためには、売買契約書等の用意が必要です。

【第三表の記入項目】

  • 譲渡した土地の住所・氏名
  • 購入・建築代金または譲渡価格の5%
  • 建物の償却費相当額
  • 土地の取得費
  • 譲渡・売却のために支払った金額
  • 譲渡金額の計算

譲渡費用に該当するのは、仲介手数料や測量費、売買契約書に貼り付けた収入印紙代などです。ただ、修繕費や固定資産税などの資産の管理にかかった費用は含まれないので、注意して記入しましょう。

よくある質問

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以下では、土地売却時の確定申告について、よくある質問について回答します。

確定申告を行わなかった場合・期限に間に合わなかった場合はどうなりますか?

確定申告を行わなかった場合や期限に間に合わなかった場合などは、本来納めるべき税金額に加え、無申告加算税や延滞税を納めなければいけません。無申告加算税とは、本来納付するべき納税額が50万円までなら15%、50万円以上を超えた金額に20%掛け合わせた金額になります。

期限に間に合わなかった場合の他にも、修正によって納付しなければいけない税額がある場合や更生・決定の処分を受けた場合も延滞税を納めなければなりません。延滞税の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までを原則として年「7.3%」。納付期限の翌日から2か月を経過した日以後を原則として「14.6%」と定められています。

誤記入があった場合はどうなる?

確定申告を提出後に、提出した内容に誤記入があった場合には、あらためて申告書などを作成し、期限までに提出する必要があります。納める税金や還付される税金は、再提出した内容の金額になります。

はじめに提出した確定申告の内容で還付金が支払われている場合には、還付済みの税金との納付の手続きも必要になります。分からない場合には、各市区町村の税務署に問い合わせるようにしましょう。

確定申告は税理士に依頼すべき?

確定申告を自分でできるか不安な人や、申告を行う時間がなかなか確保できない人は、税理士に依頼することも検討してみましょう。確定申告を、誤った内容で申請してしまうと、税務調査が入ったり、加算税や延滞税を払ったりしなければならなくなる可能性があります。

税理士に確定申告を依頼することで、忘れずに代行してくれます。忘れずに代行をしてもらえれば、自分で行う時間の節約ができて、さらに加算税や延滞税といった必要外の出費がなくなります。「確定申告を自分でやらない」という選択肢があることを覚えておきましょう。

期限内に全額納付できない時はどうすべき?

期限内に全額納付できない時は、困難な理由を税務署に申請する必要があります。国税を期限までに納付しなかった場合には、納付するまでの日数に応じた延滞税が課せられます。税務署から督促状を受け取っても、支払いを行わなかった場合には、財産の差し押さえなどの滞納処分を受けてしまう場合があります。

納付の意思があり、都合で納付が難しい場合には、あらかじめ税務署に申請することで、財産の換金や差し押さえが猶予され、猶予期間中の延滞税の全部もしくは一部が免除されます。

まとめ

土地売却をおこなった場合、確定申告をおこなう必要があります。しかし、正確な情報を申告書に記入しないと受け付けられないなどのトラブルに発展する可能性があるのも事実です。

必要な書類を準備して、抜け漏れがないように書類を作成しましょう。確定申告がよくわからないという方は、国税庁のウェブサイトに簡単に書類作成ができるコーナーが用意されているため、利用するのも一つの手です。

プロフィール
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
関西学院大学法学部法律学科卒。

宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。
数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。