【空き家問題の現状】今後できる5つの解決策や増え続ける原因・理由を徹底解説

【空き家問題の現状】今後できる5つの解決策や増え続ける原因・理由を徹底解説

昨今の日本では、空き家問題が深刻化しています。この記事を読んでいる方のなかには、「相続したけれど使わない家」や「誰も住んでいない家」に心当たりがあるという方も多いのではないでしょうか。

場合によっては空き家に多額の税金がかかってしまうこともあるので、事前に対策をしておきましょう。

当記事では、日本全国の空き家問題の現状やその解決策について詳しく解説していきます。

全国の空き家の現状

全国の空き家の現状

まずは、全国の空き家の現状を確認していきましょう。総務省が発表している「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の数は下記のようになっています。

空き家数及び空き家率の推移-全国(昭和38年~平成30年)
(引用:総務省「平成30年住宅・土地統計調査」)

上記のグラフからもわかるように、昭和38年に52万戸であった空き家は平成30年には846万戸になっており、約17倍にも増加しています。この数字だけでも、空き家問題の深刻さがわかるでしょう。

空き家の種類

空き家の種類

一口に「空き家」と言っても、下記の4種類に分類できます。

【空き家の種類】

  • 賃貸用住宅
  • 売却用住宅
  • 二次的住宅
  • その他の住宅

それぞれの空き家にどのような意味があるのか、詳しくみていきましょう。

賃貸用住宅

賃貸用住宅と呼ばれる空き家は、その名の通り賃貸のために空き家となっている住宅のことを指します。「平成30年住宅・土地統計調査」によると、すべての空き家のうち50.9%がこの賃貸用住宅となっています。

売却用住宅

売却用住宅は、新築・中古に関わらず、売却することを目的としている空き家です。空き家全体からみて3.5%となっています。

二次的住宅

二次的住宅は、長期休暇や避暑の際に利用するような「普段人が住んでいない住宅」を指します。セカンドハウスとも呼ばれており、完全な空き家とはいえません。全体の4.5%を占めていますが、そこまで深刻な割合ではないでしょう。

その他の住宅

空き家のなかで最も深刻な問題とされているのが、その他の住宅です。その他の住宅は、賃貸用・売却用・二次的住宅に該当しない住宅で、空き家全体の41.1%を占めています
空き家になってしまう要因は所有者の転勤・入院などさまざまですが、管理が行き届いていない住宅が多いので、最も住み手が見つかる可能性が低いといえるでしょう。

空き家問題はなぜ増加した?主な原因・理由は3つ

空き家問題はなぜ増加した?主な原因・理由は3つ

次に、空き家問題が増加してしまった根本的な原因についてみていきましょう。空き家問題が増加した原因は、主に下記の3つにあります。

【空き家問題が増加した原因】

  • 社会の高齢化
  • 固定資産税・都市計画税の金額が高くなる
  • 相続関係の問題

それぞれ詳しくみていきましょう。

社会の高齢化

1点目に挙げられる原因は、社会の高齢化です。昨今の日本では少子高齢化が急速に進んでいます。これにより住宅の需要と供給のバランスが崩れ、その結果空き家が増加してしまったといえます。

また、核家族化も空き家増加の原因です。ひと昔前までは、子・親・祖父母の三世代が同居し、家を相続しながら住み続けることが一般的とされていました。

しかし昨今では、祖父母世代が死亡した際には、すでに親世代が自分の家を持っているケースが大半です。これらの要因から、空き家問題は増加してしまったといえるでしょう。

固定資産税・都市計画税の金額が高くなる

空き家問題が増加した原因として、「住宅用地の軽減措置の特例」がある点も挙げられます。
住宅用地の軽減措置とは、土地のみとして不動産を所有しているよりも、住居を建築した方が固定資産税などの税率が軽減されるという特例制度です。

つまり、空き家でも土地の上に建物を建てておいた方が、税金が安くなる制度といえます。この制度を利用するために、節税対策として空き家をそのままにしているケースは多くあるようです。

相続関係の問題

空き家問題が増加した理由には、相続関係の問題もあります。親世代が亡くなった場合、一般的にはその子どもが家を相続します。しかし、子ども世代は多くの場合ですでに住居を構えているケースが多く、相続した家をうまく活用することが難しい状況にあることが大半です。

長く住んだ実家を賃貸や売却などに活用することにも抵抗があり、結果として空き家のまま放置しているケースも多くみられます。

空き家によって起こる問題・影響

空き家によって起こる問題・影響

空き家が増加することによって生じる影響は、大きく分けて下記の3点が挙げられます。

【空き家によって起こる問題・影響】

  • 外部不経済
  • 機会損失
  • 空き家率が30%を超えると財政破綻の恐れがある

それぞれ詳しくみていきましょう。

外部不経済

1点目は、外部不経済です。外部不経済とは、空き家があることで生じる不利益や損害等を指します。

代表的な例を挙げると、長期間空き家にしていることで生じる倒壊・火災・不法投棄等があり、近隣住民に多大な迷惑がかかってしまう可能性が高いです。また、空き巣を誘発する可能性もあり、治安悪化の危険性もあります。

機会損失

空き家の放置は、機会損失を生み出すこともあるでしょう。機会損失とは、空き家となっている土地や建物を有効活用できないことで生じる損失です。損失は、家主側と自治体側の双方が挙げられます。

家主側の損失は、空き家では1円も利益を生み出せないことです。リフォームし賃貸や売却をすれば利益を生み出しますが、その機会が失われます。自治体側の損失は、住民税の減少・住宅施策の非効率化です。

このように、空き家は家主と自治体の双方に不利益を生み出し、その結果地域の活性化を阻害してしまうのです。

空き家率が30%を超えると財政破綻の恐れがある

最後は、財政破綻になる恐れがあるという点です。あまり知られていませんが、実は空き家率と財政破綻には密接な関係があります。

明海大学不動産学部の斎藤広子教授は、「空き家率が30%を超えると、自治体は財政破綻の可能性が高まる」と示唆しています。実際に2007年に財政破綻をした夕張市の空き家率が33%であったことからも、非常に信ぴょう性が高いといえるでしょう。

野村総研によると、日本の空き家率は2033年までに30.2%になると予想されています。
(参考:日本不動産学会誌「空き家問題予防・解消のための不動産制度上の課題」、野村総合研究所「住宅の除却・減築などが進まない場合、2033年には空き家が2,000万戸超へと倍増」)

空き家と税金の関係

空き家と税金の関係

空き家に関わらず、土地や建物といった不動産を取得すると毎年発生するのが、「固定資産税」や「都市計画税」などの税金です。この項では、空き家と税金の関係について解説していきます。

空き家に課せられる税金

空き家には原則として、固定資産税と都市計画税の2種類の税金が発生します。下記に固定資産税と都市計画税の計算方法をまとめたので、参考にしてください。

【固定資産税の計算方法】

固定資産税評価額×標準税率1.4%(都市計画税は0.3%)

都市計画税は、都市計画法による市街化区域内に所在する建物や土地が課税対象になるので、空き家のあるエリアが市街化区域内であるかを確認しておきましょう。

空き家を解体すると固定資産税が6倍になる可能性がある

固定資産税には「住宅用地の減額措置」があり、土地として所有しているよりも建物を建てて「住宅用地」としておく方が節税になります。

下記に固定資産税における住宅用地の減額措置をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

【固定資産税の住宅用地の減額措置】

区分 減額措置
小規模住宅用地

(200平米以下の部分)

評価額×6分の1
一般住宅用地

(200平米を超える部分)

評価額×3分の1

上記の表からもわかるように、固定資産税には住宅用地として所有しているだけで、最大6分の1に減額されるという措置があります。

このため、「空き家問題を早急に解決したい」という気持ちから土地のみにすると、固定資産税が6倍になる可能性があるので注意してください。

「空き家対策特別措置法」により行政代執行がおこなわれる

「空き家対策特別措置法」により行政代執行がおこなわれる

これまでは、空き家を放置していても行政代執行がおこなわれることはありませんでした。しかし、平成26年11月に「空き家対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」が成立しています。
下記に空き家対策特別措置法の概要をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

【空き家対策特別の概要】

  • 空き家の実態調査
  • 空き家の跡地についての活用促進
  • 空き家の所有者への適切な管理の指導
  • 特定空き家に対して、助言・指導・勧告・命令ができる
  • 特定空き家に対して罰金や行政代執行をおこなうことができる

上記からもわかるように、所有者が空き家に対して適正な管理をおこなっていない場合、特定空き家として勧告や命令ができるようになりました。命令を受けても改善がない場合には、行政代執行により建物の解体がおこなわれるケースもあります。
所有している不動産が特定空き家に指定される前に、早急な対処をおこなっておきましょう。

空き家問題の対策・解決策5選

空き家問題の対策・解決策5選

最後に、空き家問題の対策・解決策をご紹介します。空き家問題を早急に解決したい方には、下記の方法がおすすめです。

【空き家問題の対策・解決策5選】

  • 空き家バンクを利用する
  • 空き家管理サービスを利用する
  • 空き家を売却する
  • 賃貸として人に貸す
  • 空き家を解体する

それぞれ詳しくみていきましょう。

①空き家バンクを利用する

1点目に挙げられる解決策は、空き家バンクを利用することです。空き家バンクとは、地方自治体が取り組んでいる対策の一環で、空き家の情報をホームページなどで公開し、貸主と借主の仲介をしています
営利目的ではないため高い収益は期待できませんが、賃貸としても売買としても利用できるので、ぜひ活用してみましょう。

②空き家管理サービスを利用する

空き家問題の対策として、空き家管理サービスの利用もおすすめです。空き家管理サービスでは、所有する空き家をリーズナブルな価格で管理してくれます。
クレームの一時対応や目視での異常確認、草刈りなどの雑用も依頼できるので、定期的に利用すると安心でしょう。

③空き家を売却する

空き家を売却するのもひとつの手です。空き家を売却する際には、あらかじめ建物と土地の双方を売却するか、建物を取り壊して土地のみを売却するかを決めておきましょう。
多くの空き家では築年数が経過しており、人がそのまま住めるものではないケースが大半です。建物の状態によっては土地のみとした方が有利な条件で売却できるので、空き家売却に強い不動産会社に相談してみましょう。

④賃貸として人に貸す

リフォームや修繕をおこない、民泊やシェアハウスなどの形で人に貸す方法も空き家対策におすすめです。
昨今では、外国人観光客や若者を中心にシェアハウスや民泊がブームとなっています。通常の賃貸では貸付が難しい物件でも、シェアハウスや民泊なら比較的借り手がつきやすいでしょう。
リフォーム費用はかかりますが、家賃という不労所得が毎月得られます。

⑤空き家を解体する

最後に挙げられる解決策は、空き家の解体です。放置された空き家は、火災や倒壊などのさまざまなリスクがつきまといます。そのため、思い切って解体してしまうのもひとつの手でしょう。
空き家の解体には、各自治体が助成制度を用意しています。条件や助成内容は自治体によって異なるので、解体を検討している方は調べてみてください。

まとめ

当記事では、空き家問題が増加している原因や解決策について解説しました。相続や税金対策等の理由で空き家を放置してしまっている方は、外部不経済や機会損失を起こさないためにも、空き家問題を早急に解決しましょう。
空き家問題の解決には、空き家バンクや空き家管理サービスの活用が挙げられます。空き家の放置は行政代執行のリスクもあるので、まずは活用方法を専門家に相談してみるのもおすすめです。
この記事を参考に、空き家問題を解決していきましょう。

プロフィール
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
矢野翔一(有限会社アローフィールド)
関西学院大学法学部法律学科卒。

宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。
数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。