インバウンド集客の方法とは？メリットと効果的な施策10選

市場規模の大きさ

インバウンド市場の規模は、近年急速に拡大しています。2019年には過去最高の3,188万人超の訪日外国人観光客を記録し、その消費額は約4.8兆円に達しました。

2023年には、コロナ禍からの回復により、消費額が過去最高の約5.3兆円を記録。さらに、政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人、消費額を15兆円にする目標を掲げています。

この数字は、日本の主要輸出品である自動車や半導体の輸出額に匹敵する規模です。つまり、インバウンド市場は日本経済にとって非常に重要な外貨獲得源となる可能性を秘めているのです。

市場規模が大きいということは、ビジネスチャンスも大きいということを意味します。効果的な集客戦略を立てることで、この成長市場からの収益を獲得できる可能性が高まります。

参考：日本政府観光局｜訪日外客統計｜年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移

参考：観光庁｜訪日外国人の消費動向 2023 年 年次報告書

客単価の高さ

インバウンド観光客の特徴として、高い客単価が挙げられます。2023年の統計によると、訪日外国人観光客1人当たりの消費額は約21.3万円です。これは2019年の15.9万円から大きく増加。この高い消費額の背景には、以下のような要因があります。

このように、インバウンド観光客は一般的に高い消費意欲を持っているため、適切な集客と満足度の高いサービス提供により、大きな収益を見込むことができるでしょう。

参考：観光庁｜訪日外国人の消費動向 2023 年 年次報告書

口コミ効果の高さ

インバウンド観光客の特徴として、SNSなどを通じた情報発信力の高さが挙げられます。多くの観光客が自身の旅行体験をSNS上で共有し、それが新たな観光客を呼び込む強力な口コミ効果を生み出しています。

この口コミ効果の高さは、以下のような要因によって支えられています。

例えば、ある観光客が日本の温泉旅館での素晴らしい体験をSNSで共有すると、その投稿を見た友人や家族が日本旅行を計画するきっかけになることがあります。このような口コミの連鎖が、効果的かつ低コストの集客手段となっています。

したがって、インバウンド集客においては、単に観光客を呼び込むだけでなく、彼らに素晴らしい体験を提供し、その体験を共有したくなるような仕掛けを作ることが重要です。これにより、持続的な集客効果を生み出すことが可能となります。

多言語対応のWebサイト・SNSアカウントを運用する

多言語対応のWebサイト・SNSアカウントを運用することは、インバウンド集客の基本となる重要な施策です。具体的な方法としては、まず自社のWebサイトを英語、中国語（簡体字・繁体字）、韓国語など、主要な言語に翻訳することから始めます。翻訳の際は、単純な機械翻訳ではなく、ネイティブスピーカーによるチェックを入れ、自然な表現になるよう心がけましょう。

SNSについては、Facebook、Instagram、X（旧Twitter）、WeiboやLINEなど、ターゲット国で人気のプラットフォームに公式アカウントを開設します。各言語で定期的に投稿を行い、現地のユーザーとの交流を深めていきましょう。

この施策を行う上でのポイントは、単なる翻訳だけでなく、各国の文化や習慣に合わせたコンテンツのローカライズを行うことです。例えば、中国向けのコンテンツでは、現地で人気の支付宝（Alipay）やWeChat Payなどの決済方法に対応していることをアピールするなど、ターゲット国のニーズに合わせた情報発信が効果的です。

インフルエンサーマーケティングを実施する

インフルエンサーマーケティングは、訪日外国人観光客に大きな影響力を持つ施策です。具体的な方法としては、まずターゲット国の有力なインフルエンサーを選定します。選定基準は、フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率や投稿内容の質、ターゲット層との親和性なども考慮します。

選定したインフルエンサーに自社の商品やサービスを体験してもらい、その様子をSNSで発信してもらいます。例えば、ホテルであれば宿泊体験を、飲食店であれば食事体験を提供し、リアルな感想や魅力的な写真・動画を投稿してもらいます。

この施策を行う上でのポイントは、インフルエンサーの個性や価値観と自社のブランドイメージが合致しているかを慎重に見極めることです。また、一回限りの投稿依頼ではなく、長期的なパートナーシップを築くことで、より自然で信頼性の高い情報発信が可能になります。さらに、インフルエンサーの投稿と連動して自社のSNSでも関連コンテンツを発信するなど、相乗効果を狙った施策展開が効果的です。

訪日外国人観光客向けのプロモーション動画・記事を作成する

訪日外国人観光客向けのプロモーション動画・記事の作成は、視覚的に魅力を伝えられる効果的な施策です。具体的な方法としては、まず自社の商品やサービスの特徴を簡潔に伝える短編動画（30秒〜2分程度）を制作します。日本の文化や伝統を体験できるコンテンツや、現地の人々との交流シーンなど、外国人観光客の興味を引く要素を盛り込みましょう。

記事については、自社の魅力だけでなく、周辺の観光スポットや日本文化に関する情報も含めた総合的なガイド記事を作成します。これらのコンテンツは、YouTubeやVimeoなどの動画プラットフォーム、Mediumなどの記事投稿サイト、自社のWebサイトやSNSで公開します。

この施策を行う上でのポイントは、多言語対応と文化的配慮です。動画には多言語字幕を付け、記事も主要言語に翻訳することで、より多くの国の人々に理解してもらえるようにします。

また、ターゲットとなる国や地域の文化や嗜好を考慮してコンテンツをカスタマイズすることも重要です。例えば、欧米向けには日本の伝統文化を強調し、アジア向けには最新のトレンドや買い物情報を盛り込むなど、ターゲットに応じた内容の調整が効果を高めるでしょう。

検索エンジンマーケティング（SEM）を実施する

検索エンジンマーケティング（SEM）は、Google等の検索エンジンで自社のWebサイトを効果的に表示させる施策です。具体的な方法としては、まずターゲットとなる国・地域の言語でキーワード調査を行います。「日本旅行」「東京観光」などの一般的なキーワードだけでなく、「日本の温泉」「東京のラーメン店」など、より具体的なキーワードも調査します。

次に、これらのキーワードを使ったコンテンツを作成し、Webサイトに掲載します。同時に、Google広告などの検索連動型広告を出稿し、有料での上位表示も狙いましょう。

施策を行う上でのポイントは、単にキーワードを詰め込むだけでなく、ユーザーにとって価値のある情報を提供することです。また、各国の検索エンジン事情に注意を払うことも重要です。例えば、中国ではBaiduが主流ですので、Baidu向けのSEO対策も必要になります。

ターゲットとなる国・地域の言語で自社サービスを上位表示させるには、現地のSEO専門家と協力することも効果的です。彼らの知見を活用することで、各国特有の検索傾向や最新のSEOトレンドに対応したWebサイト運営が可能になります。

SEMに関するより詳しい情報は、以下の記事をご参照ください。

関連記事：SEMとは？SEOやリスティング広告との違いや活用方法について解説

ソーシャルメディアマーケティング（SMM）を実施する

ソーシャルメディアマーケティング（SMM）は、SNSを活用して自社の認知度を高め、訪日外国人観光客との関係構築を図る施策です。具体的な方法としては、まずターゲット国で人気のSNSプラットフォームを特定します。

例えば、中国ではWeiboやWeChatが、韓国ではKakaoTalkが主流です。これらのプラットフォームに公式アカウントを開設し、定期的に投稿を行います。投稿内容は、自社の商品やサービスの紹介だけでなく、日本の文化や観光情報、現地の人気トレンドに関連した話題など、多岐にわたるコンテンツを用意しましょう。

施策を行う上でのポイントは、各プラットフォームの特性に合わせたコンテンツ作りです。例えば、Instagramでは視覚的に魅力的な写真や短い動画が効果的ですが、Weiboでは少し長めの文章と画像の組み合わせが好まれます。また、ハッシュタグを効果的に活用し、より多くのユーザーにリーチすることも重要です。

さらに、フォロワーとの対話を大切にし、コメントやメッセージに迅速に対応することで、エンゲージメントを高めることができます。定期的なキャンペーンや投稿企画を実施し、フォロワーの参加を促すことも効果的です。

ディスプレイ広告を出す

ディスプレイ広告は、訪日外国人観光客が利用するさまざまなWebサイトやアプリに視覚的な広告を表示する施策です。具体的な方法としては、まずGoogle広告やFacebook広告などの主要なプラットフォームを選択します。次に、ターゲットとなる国・地域、年齢層、興味関心に基づいてオーディエンスを設定します。

広告クリエイティブは、魅力的なビジュアルと簡潔なメッセージを組み合わせて作成します。例えば、日本の美しい景色や独特の文化体験、自社サービスの特徴などを視覚的に訴求する画像や動画を用意します。

施策を行う上でのポイントは、ターゲット国の文化や嗜好に合わせたデザインや訴求ポイントを考慮することです。例えば、欧米向けには日本の伝統文化や自然景観を強調し、アジア向けには最新のテクノロジーやショッピング情報を前面に出すなど、ターゲットに応じて広告内容をカスタマイズします。

また、A/Bテストを実施し、最も効果的な広告クリエイティブや配信設定を見つけることも重要です。広告の表示回数、クリック率、コンバージョン率などの指標を常に監視し、パフォーマンスの向上に努めましょう。さらに、リターゲティング広告を活用し、一度自社サイトを訪れたユーザーに再度アプローチすることで、コンバージョン率の向上を図ることができます。

訪日外国人観光客向けのポータルサイトに掲載する

訪日外国人観光客向けのポータルサイトへの掲載は、多くの潜在的な顧客にリーチできる効果的な施策です。具体的な方法としては、まず自社のターゲット層が利用する主要なポータルサイトを特定します。例えば、TripAdvisor、Expedia、Booking.com、じゃらんなどが挙げられます。

次に、各ポータルサイトの掲載基準や手続きを確認し、必要な情報を準備します。これには、施設の基本情報、サービス内容、料金、アクセス方法などが含まれます。また、魅力的な写真や動画、多言語での詳細な説明文も用意します。

施策を行う上でのポイントは、各ポータルサイトの特性を理解し、それに合わせた情報提供を行うことです。例えば、TripAdvisorでは口コミが重要な要素となるため、既存の顧客に積極的に口コミを依頼することも効果的です。また、定期的に情報を更新し、季節限定のサービスや特別プランなどの最新情報を常に掲載することで、サイト訪問者の興味を引き続けることができます。

さらに、ポータルサイトでの予約機能を活用し、外国人観光客が直接予約できるようにすることで、予約のハードルを下げることができます。多言語でのカスタマーサポートを提供することも、訪日外国人観光客の安心感につながり、予約率の向上に寄与します。

Googleマップを活用する

Googleマップの活用は、訪日外国人観光客に自社の位置情報や基本情報を効果的に伝える重要な施策です。具体的な方法としては、まずGoogleビジネスプロフィール（旧Googleマイビジネス）に登録し、自社の情報を正確に入力します。基本情報（名称、住所、電話番号、営業時間など）に加え、施設の写真、提供サービス、ウェブサイトリンクなども掲載します。

次に、Googleマップ上での表示を最適化するために、MEO（Map Engine Optimization）対策を行います。これには、正確で詳細な情報提供、定期的な情報更新、写真の追加などが含まれます。また、顧客に口コミやレビューを積極的に依頼し、評価を向上させることも重要です。

施策を行う上でのポイントは、多言語対応と現地の検索傾向への対応です。自社情報を英語、中国語、韓国語など、主要な言語で提供することで、より多くの訪日外国人観光客にリーチできます。また、「near me」検索に対応するため、自社の周辺情報や最寄り駅からのアクセス方法なども詳細に記載しましょう。

さらに、Googleマップの投稿機能を活用し、定期的に新しい情報や特別オファーを発信することで、マップ上での視認性を高めることができます。季節限定のメニューや、イベント情報なども積極的に投稿し、常に新鮮な情報を提供することが重要です。また、顧客からの質問に迅速に回答することで、サービスの質の高さをアピールすることもできるでしょう。

MEOに関するより詳しい情報は、以下の記事をご参照ください。

関連記事：MEO とは？対策方法と上位表示のポイントを解説

体験型コンテンツを提供する

体験型コンテンツの提供は、訪日外国人観光客に日本の文化や伝統を直接体験してもらう効果的な施策です。具体的な方法としては、自社の特性や地域の特色を活かした体験プログラムを開発します。例えば、旅館であれば浴衣の着付け体験や茶道体験、飲食店であれば寿司作り教室や日本酒テイスティング、小売店であれば伝統工芸品の制作体験などが考えられます。

また、地域の観光資源と連携したツアーやイベントも効果的です。例えば、地元の祭りへの参加体験、古寺での座禅体験、農家での農業体験など、日本ならではの文化や生活を体験できるプログラムを企画します。

施策を行う上でのポイントは、単なる見学や説明ではなく、訪日外国人観光客が実際に「体験」できる要素を多く取り入れることです。また、言語のバリアを考慮し、多言語対応のガイドや通訳サービスを用意することも重要です。さらに、SNSなどで共有したくなるような「インスタ映え」するポイントを設けることで、参加者による情報拡散も期待できます。

体験プログラムの例としては、着物レンタルと合わせた古都散策、忍者体験道場、和菓子作り教室、日本庭園での抹茶体験、相撲部屋見学ツアーなどが挙げられます。これらの体験を通じて、訪日外国人観光客に日本文化への理解を深めてもらい、リピーターの獲得にもつなげることができます。

訪日外国人観光客向けのイベントに参加する

訪日外国人観光客向けのイベントへの参加は、自社の商品やサービスを直接アピールできる効果的な施策です。具体的な方法としては、まず自社のターゲットに合致するイベントを探します。例えば、日本政府観光局（JNTO）や地方自治体が主催する訪日プロモーションイベント、国際旅行博、文化交流フェスティバルなどが挙げられます。

イベントへの参加方法は、ブース出展、プレゼンテーション、ワークショップの開催などさまざまです。自社の特徴や提供できる体験を最大限にアピールできる参加形態を選びましょう。

施策を行う上でのポイントは、単なる情報提供にとどまらず、参加者が実際に体験できるコンテンツを用意することです。例えば、伝統工芸品の製作体験、日本食の試食、バーチャルリアリティを使った観光地体験など、五感に訴えかける要素を取り入れることで、より強い印象を残すことができます。

また、多言語対応のスタッフを配置し、外国人観光客とのコミュニケーションを円滑に行うことも重要です。イベント参加者の連絡先を収集し、後日フォローアップすることで、実際の集客につなげることができます。さらに、イベントの様子をSNSで発信し、その場にいない人にも情報を届けることで、より広範囲にアピールすることができます。