ホテル業界のインバウンド対策6選！集客のコツや対策の重要性を解説

インバウンド市場が拡大している

2023年の訪日外国人数は2506万人に上り、コロナ禍前の2019年の8割まで回復しました。今後さらなる増加が見込まれ、2024年には過去最高の3310万人に達すると予測されています。

また、訪日外国人の国籍も多様化しています。従来は中国、韓国、台湾などのアジア圏からの旅行者が中心でしたが、欧米豪からの旅行者も増えつつあります。各国の旅行ニーズに合わせた戦略的なプロモーションにより、より幅広い国・地域からの集客が期待できるでしょう。

訪日外国人観光客は消費額が高い

訪日外国人観光客の1人あたりの旅行支出は、国内旅行客と比べて高額です。例えば2023年10-12月期のビジネスホテルの客室単価は1万2,339円で、コロナ禍前と比べ28.7%上昇しました。

消費の内訳を見ると、買い物よりも宿泊や飲食、体験型観光などを重視する傾向があります。富裕層の取り込みにより、さらなる消費単価の引き上げも期待できます。こうした状況から、インバウンド集客に力を入れるホテルや小売店などが増えているのです。

地方経済の活性化に繋がる

これまでインバウンドは東京、大阪、京都などのゴールデンルートに集中する傾向がありました。しかし、地方の魅力が海外に伝わるにつれ、地方部への外国人旅行者も増えつつあります。

地方には、美しい自然や魅力的な文化、グルメなどの観光資源が豊富にあります。外国人観光客の訪問は、宿泊、飲食、土産物販売など、地域のさまざまな産業に経済効果をもたらします。交通機関の利用も増え、地方の公共交通の維持にも貢献します。インバウンドは、人口減少に悩む地方にとって、まさに起爆剤となり得るのです。

国際交流の促進になる

インバウンドの増加は、日本人と外国人との交流の機会を増やし、相互理解を深める上でも重要な意味を持ちます。外国人観光客と接する中で、日本の文化や習慣を知ってもらえるだけでなく、日本人自身も異文化への理解を深められます。

ホテルのフロントや観光案内所、飲食店などで、言葉は通じなくても、笑顔とボディランゲージで心を通わせる光景がよく見られるようになりました。一期一会の出会いが、世界平和にも繋がっていくのです。

多言語対応を強化する

ホテルのウェブサイトや館内表示、パンフレットなどの外国語版を用意することが重要です。特に、英語、中国語（簡体字・繁体字）、韓国語への対応がおすすめです。言葉の壁は、外国人のお客様にとって大きなストレス要因となります。多言語対応により、予約時から滞在中、チェックアウトまで、ホテルのサービスをスムーズに利用できることで、お客様満足度のアップにつながるでしょう。

キャッシュレス決済を導入する

クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、現金以外の決済手段を拡充することをおすすめします。多くの外国人観光客は、多額の現金を持ち歩くことに不安を感じています。また、海外発行のキャッシュカードでは、ATM手数料が高くつくこともあります。いつも使っている決済方法が利用できれば、安心して買い物や食事を楽しめるでしょう。

オンライン予約システムを導入する

自社ウェブサイトや海外の旅行サイトと連携し、外国語でのオンライン予約を可能にするのがおすすめです。外国人旅行者の多くは、ネットで宿泊先を予約します。Booking.comなどの馴染みのあるサイトから、スムーズに予約できると便利です。また、予約データを一元管理できるので、ホテル側の業務効率化にもつながります。

外国人向けサービスを提供する

海外からのお客様のニーズに合わせたサービスの提供が求められます。例えば、以下のようなサービスが考えられます。

● 無料Wi-Fiサービス

● 外国語対応のテレビチャンネル

● 電気ケトル、スリッパ、歯ブラシなどのアメニティ

● 宗教や食事制限に配慮した食事オプション

中でも、宗教や食文化への配慮は重要です。イスラム教徒のお客様向けの礼拝スペースやハラル食の提供、ベジタリアンの方向けの食事メニューの用意など、多様なニーズに応えることが可能です。

周辺の観光スポットやグルメ情報を発信する

ホテル周辺の観光スポットやレストラン、ショップなどの情報を、外国語で発信するのは効果的です。外国人観光客は、ホテルのコンシェルジュに頼ることが多いですが、事前に情報をチェックできれば、旅行計画が立てやすくなります。地域の魅力を伝えることで、滞在日数の延長や再訪につながる可能性もあります。

外国人接客研修を実施する

外国人のお客様とのコミュニケーションスキルや異文化対応力を高めるための、従業員向け研修の実施は欠かせません。言葉だけでなく、文化的背景や価値観の違いを理解することで、きめ細やかなサービス提供が可能になります。トラブル防止と外国人のお客様満足度向上の両方に役立ちます。

多言語表示されているか

館内の案内表示や部屋の設備説明、メニューなどが、英語や中国語、韓国語など主要な言語で表記されていることが望ましいです。特に、非常口や避難経路、施設の利用方法については、誤解のない明確な多言語表示が求められます。ピクトグラム（絵文字）などを活用し、直感的にわかりやすい表現するような工夫が効果的です。また、スマートフォンで読み取れるQRコードから多言語の詳細説明にアクセスできると、なお親切といえるでしょう。

Wi-Fi環境が整っているか

外国人観光客にとって、旅先でのインターネット接続は欠かせません。客室やロビー、レストランなど館内各所に無料のWi-Fiスポットが整備されていると、大変喜ばれます。接続方法は多言語で分かりやすく説明し、パスワード入力を簡略化することが大切です。通信速度や同時接続可能台数にも配慮が必要ですね。客室では有線LANも用意しておくと、より快適にネットを利用してもらえます。

ゴミ箱が一定数設置されているか

日本の宿泊施設では、客室内のゴミ箱が少ないことに外国人観光客が戸惑うことがよくあります。各国の習慣の違いから、部屋にゴミを溜める人も少なくありません。客室内や館内要所に十分な数のゴミ箱を設置し、分別方法をイラストや多言語で丁寧に説明しましょう。ゴミ処理に関する注意事項も、事前に多言語で明示しておくことが大切です。

現地の観光情報が充実しているか

外国人観光客は、宿泊施設にコンシェルジュ的な役割も期待しています。周辺の観光スポットやレストラン、ショッピング施設、交通機関などの情報が、パンフレットやデジタルサイネージ、口頭など様々な形で多言語提供されていると、大変役立つでしょう。

宿泊施設のスタッフが地域の魅力を熟知し、お客様の関心に合ったおすすめ情報を提供できるようにしておくことがポイントとなります。また、近隣の飲食店やお土産店、アクティビティ施設などと提携し、割引クーポンや優先予約など、お得な特典を用意するのもよいのではないでしょうか。

温泉やプールの利用制限がないか

日本の温泉地の宿泊施設では、タトゥーがある人の入浴を断るケースがまだ見られます。また、宿泊者以外はプールが利用できないことも珍しくありません。しかし、こうした制限は外国人観光客の理解を得にくいのが実情です。タトゥーの有無で入浴を制限しない、日帰り利用客にもプールを開放するなど、利用条件を緩和する方向で見直すことです。貸し切り時間の設定やリストバンドの活用など、柔軟な運用を工夫することで、多様な宿泊者のニーズに応えられるはずです。

訪日外国人観光客のニーズは多岐にわたります。彼らの視点に立ち、各施設の事情に合わせて受入体制を整備していくことが、これからの日本の宿泊業界に求められています。インバウンド対応は、一朝一夕にはできませんが、一歩一歩着実に進めることが肝要です。