AISAS(アイサス)モデルとは?AIDMAとの違いや企業の事例を紹介
商品・サービスを購入するまでの消費者心理また行動の変化を分析して、モデル化したものを「購買行動モデル」といいます。
購買行動モデルは数多くありますが、今回はそのモデルのなかでもメジャーなモデルのひとつである、「AISAS(アイサス)」について解説をしていきます。
中盤で紹介している有名企業での活用事例では、消費者心理の変化が分かるので参考してみてください。
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AISAS(アイサス)モデルとは?
AISASモデルとは、2004年に電通が提唱したマーケティング理論の1つです。
読み方は「アイサス」で、「AISASの法則」と呼ばれることもあります。
消費者が商品・サービス選定から利用もしくは購入に至るまでをパターン化したもので、インターネット上での買い物を想定した購買行動モデルです。
AISASは各行動の頭文字からきており、それぞれ以下のような行動を指します。
- Attention(注目・認知):ニュースや広告・SNS等のメディアを通じて、商品・サービスについて知る
- Interest(興味・関心):役に立つかもしれない等、商品・サービスに興味を持つ
- Search(検索):使用感や値段、口コミなどを検索エンジンやSNSで調べて購入するかどうかを検討する
- Action(購買):自分にとって価値があると判断した場合に購入・申込をする
- Share(共有):期待以上の価値があったと感じた場合、SNSなどでシェア・拡散する
ほとんどの人が、商品・サービスを購入する際に、知らず知らずのうちに上記の流れを辿っています。
AISAS(アイサス)モデルの特徴
インターネットが急速に普及したことにより、消費者の購買モデルも変化。
その変化に対応する購買モデルがAISASであり、その象徴として2つの「S」が組み込まれています。
商品に興味・関心を持った消費者は、すぐに購入するのではなくインターネットを使用した「Search(検索)」を行います。
また、購入後はSNSで「Share(共有)」するという、インターネット時代に即した購買プロセスを踏むのが、AISASの特徴です。
なかでも「Share(共有)」を上手く活用できれば、消費者間でAISASを循環させることも夢ではありません。
企業が多大な労力をかけずとも消費者発信でプロモーションを勧めることができるのです。
ただし、注意が必要なのが「Share」はポジティブなものだけとは限らない点です。
商品・サービスのクオリティが低い場合は、ネガティブな「Share」が生まれることもあります。
内容の良し悪しに限らず、一度発生した「Share」は誰にも止められないため、十分な注意が必要です。
AIDMA(アイドマ)との違い
購買行動モデルのなかでもベーシックなモデルがAIDMA(アイドマ)です。
AIDMAは1920年に販売・広告の実用書の著者であるサミュエル・ローランド・ホールの著書で提唱されて以来、多くの企業で活用されています。
AIDMAの購買モデルは下記のようになっています。
- Attention(注意・認知):ニュースや広告・SNS等のメディアを通じて、商品・サービスについて知る
- Interest(興味・関心):役に立つかもしれない等、商品・サービスに興味を持つ
- Desire(欲求):興味・関心を持った商品・サービスが欲しくなる
- Memory(記憶):商品・サービスを記憶しておく
- Action(行動):キャンペーンなどをきっかけに購入に踏み切る
AISASの元となったのがこのAIDMAモデルであり、両者は非常に近い構造をしています。
基礎的なことはAIDMAと変わりませんが、AIDMAが提唱された当時にはなかった、インターネットやSNSなどを考慮した要素を追加したことに違いが表れます。
そのため、現代ではAISASを活用している企業も多く存在。購買モデルの変化に伴い企業と消費者の関係も、「企業から消費者」というワンウェイから、「企業から消費者、そして企業・・・」というインタラクティブ(双方向)な関係に変化が見られます。
なぜAIDMAからAISASへと変化したのか
2000年代に入り、GoogleやAmazonが日本に参入。
2003年に家庭向け光回線サービスが登場したことにより、2000年には37.1%だったインターネット普及率が3年で64.3%に大幅アップしました。
また時同じくして、その後の mixiなどのSNSが流行。こうした背景により、消費者は購入前に「調べる」ことができるようになりました。
特に高額商品においては失敗を回避したい心理が働くため、類似商品の検索をはじめ、口コミを調べてから購入に至るようになったのです。
こうした購買行動の変化を受け、従来のAIDMAからAISASに購買モデルも変化。広告媒体もマス広告からインターネット・SNSへと主戦場が移り変わっています。
ただし、現代でもすべての商品・サービスにおいてAIDMAが適用しないわけではありません。
たとえば日用品などは、購入後にSNSなどで共有されることは考えにくいため、未だAIDMAが向いていると言えます。
AISASモデルを使ったマーケティング事例を紹介
AISASの購買モデルを活用して、成功を収めている企業は数多くあります。これから活用を試みる企業には非常に参考になるため、今回は2つの事例をご紹介します。
- スターバックス
- RIZAP
各事例において、AISASの段階ごとの対応にも触れているので、消費者心理・行動の変化を把握に役立つでしょう。
【モデルケース1】スターバックス
世界的コーヒーチェーン店であるスターバックスも、AISASモデルを活用して成功を収めた企業の1つです。スターバックスは「Share」を上手に活用しており、消費者が自発的にプロモーションを行うような仕組み作りを行っています。
Attention
スターバックスでは広告ではなくSNSに主軸を置き、集客を行っています。
公式Twitterのフォロワー数は523万人以上、Instagramにおいては318万人以上の巨大なフォロワーを抱えており、新商品の投稿をすれば瞬く間に拡散。
広告費をほとんどかけていなくても、商品の認知拡大を図れる体制ができています。
Interest
公式サイトのツイートや投稿を見た消費者は投稿された商品に興味を持つ人がでてきます。
そのうちの何割かは、公式ツイートのリツイートや、購入した商品を写真付きでSNSに投稿。
その投稿を見た別の消費者が興味を誘発される仕組みができあがっています。
また、スターバックス側でも消費者に興味を持ってもらえるよう、新商品に関するコンテンツをリリースしたり、季節限定商品を発売したりしています。
Search
興味をもった消費者は、インターネットやSNSなどを利用して商品の情報・口コミの検索を行います。写真映えする外観・スタイルを持つスターバックスでは、InstagramやTwitterで投稿されることが多くあり、スターバックスの消費者は「ハッシュタグ」検索を当たり前に行います。
Action
評判や口コミを見た消費者はさらに興味をかき立てられ、実際に店舗に足を運び、購入に至ります。新作がアナウンスされてからスターバックスに行列ができるのは、もはや一種の季節行事とも言えるでしょう。
Share
スターバックスは商品も店内もおしゃれで写真映えするため、SNSでシェアされやすい傾向にあります。AISASの肝とも言える「Share」部分が非常に強く、これにより広告費をほとんどかけずに集客が可能となっています。
【モデルケース2】ライザップ
インパクトのあるビフォーアフターでおなじみのRIAPでもAISASを活用。
多くの人の興味・関心を引くことに成功しています。
Attention
記憶に残りやすいBGMとインパクトのあるビフォーアフターで一気に認知度を上げたライザップ。
覚えやすくマネしやすい、かつインパクトがあることからYouTuberによるパロディ動画が公開されるなど、その認知度の高さが窺えます。
Interest
多くの有名人や著名人をCMに起用。また「結果にコミットする」「たった2ヵ月でこのカラダ」といったベネフィット訴求でライザップへの消費者の興味・関心をかき立てることに成功しています。
Search
多くの消費者が興味・関心を持って「検索」することを見越して、ライザップではHPの内容を充実。ダイエット成功者の写真を多用し、消費者が将来像を描きやすくしています。しかし、世間的には「効果がない」という声も一定数あります。そうした声に消費者が不安を抱かないよう、アフィリエイトを上手く利用。ネガティブなキーワードに対してもポジティブな印象を受けるような記事が上位表示されるように工夫を凝らしています。
Action
ライザップでは2ヵ月で29,8000円と決して安くはない価格設定です。しかし、「30日間全額返金保証制度」を設けることで、入会のハードルを下げることに成功。
「口コミで効果が出るのは分かったけど、高い・・・」と、入会を尻込みする人の後押しをしています。
Share
外見のなかでも体型の変化は認知されやすいため、消費者のSNS投稿への熱量が高めです。
ビフォーアフターの写真映えといった点においてはInstagramとの相性が良く、ライザップのハッシュタグ検索においては57万件もの投稿があります。
こうして顕在・潜在問わず「痩せたい」と思っている消費者にコストをかけずにリーチすることに成功しています。
AISASを細分化したAISCEASモデル(アイセアス・アイシーズ)
AISASに似たモデルにAISCEAS(アイセアス・アイシーズ)があります。
いずれも「インターネット普及後の消費行動モデル」ですが、2005年にアンヴィコミュニケーションズによって提唱されたAISCEASでは、AISASの購買プロセスに「Comparison(比較)」「Examination(検討)」を追加。
AISASよりも消費者の慎重さを表す購買モデルと言われています。AISCEAS行動の具体例は下記のとおりです。
- Attention(注意・認知): ニュースや広告・SNS等のメディアを通じて、商品・サービスについて知る
- Interest(興味・関心):役に立つかもしれない等、商品・サービスに興味を持つ
- Search(検索):使用感や値段、口コミなどを検索エンジンやSNSで調べて購入するかどうかを検討する
- Comparison(比較):同類商品の比較を行う
- Examination(検討):どれにするか、または購入するか否かの検討を行う
- Action(購買):自分にとって価値があると判断した場合に購入・申込をする
- Share(共有):期待以上の価値があったと感じた場合、SNSなどでシェア・拡散する
AISASはもう古い?次世代の購買行動モデルを紹介
SNS全盛期と言われる時代から、コンテンツマーケティングの時代へと変化を遂げつつある昨今。
購買行動モデルにおいてもAIDMAやAISASは「古い行動モデル」と言われるようになり、次々と次世代型の行動モデルが登場しています。
複雑化する消費者心理を表した注目の行動モデルを3つ紹介します。
AISASを進化させた「Dual AISAS」モデル
前述したAISASでは消費者の興味関心は「買いたい」のみであると考えられてきました。
それに対して、Dual AISASでは、消費者の興味は「コミュニケーション(広めたい)への興味」と「商品(買いたい)への興味」の2つがあるとしています。
AISASは「コミュニケーションへの興味を高めれば、連動して商品への興味も高まる」と考えますが、Dual AISASは「この2つに連動性はなく、戦略的な連動が必要」と考え、いかに「コミュニケーションに関心のある層」を「商品に関心がある層」に変容させるかが重要になります。
その課題を解決する鍵として、Activate(起動・活性化)を追加。
何らかのきっかけで、商品を意識して行動を起こすことを意味しています。
<広めたい「A+ISAS」>
- Activate(起動・注意・活性化):なんらかのきっかけで、コミュニケーションから商品そのものに興味が移る
+
- Interest(興味・関心):参加型のキャペーンやバズ動画などのプロモーションに興味を持つ
- Share(共有):コンテンツに賛同し、自身の感情を加えて共有
- Accept(受容・共鳴):共有されたコンテンツを第三者が受け取って共鳴する
- Spread(拡散):コンテンツを受容した第三者がさらに拡散を行う
コンテンツマーケティング時代の購買行動モデル「DECAX(デキャックス)」
DECAX(デキャックス)とは、2015年に電通が提唱した、コンテンツマーケティング(有益な情報を発信して消費者とコミュニケーションを図る)時代を代表する購買行動モデルです。
従来の行動モデルは企業視点でしたが、DECAXは消費者視点で展開されます。
AIDMAやAISASのようにAttention(注意喚起)から始まるのではなく、Discovery(消費者が発見)から始まる点に消費者視点である特徴が表れています。
DECAXが提唱される背景には情報の飽和があります。
多くの情報が溢れる現代では、企業側が有益な情報を発信し、消費者に見つけてもらう必要があるのです。
そこで重要視されているのがコンテンツマーケティング手法であり、それに対応する行動モデルがDECAXというわけです。
- Discover(発見):Google検索やSNSなど公式アカウントやオウンドメディアで発見する
- Engage(関係):有益な情報源として企業への信頼度を高める
- Check(確認):運営企業や商品・サービスの詳細を確認する
- Action(購買): 中立性や信憑性が確認できたら、商品を購入する
- EXperience(体験・共有):商品・サービスを体験。SNSなどで共有する
SNS時代の新しい購買行動「パルス型消費」
引用元:データから見えた「パルス型」消費行動——瞬間的な購買行動が増えている:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(2)
パルス型消費とは、特に理由もなく瞬間的に購買意欲が湧き、そのまま購入に至る、という新しい購買行動モデルです。
SNS時代では、24時間365日消費行動のタイミングがあり、消費者が「物を買う」抵抗が薄れてきています。
そのため、消費者の行動モデルは、これまでの行動モデルに見られたカスアタマージャーニー型ではなく、6つの直感センサーにより瞬間的に購入を決めるパルス型消費に変化している、という考え方です。
<6つの直感センサー>
- Safety(セーフティ):「より安心安全なもの」に反応する直感センサー
- For Me(フォーミー):「より自分にぴったりだと思うもの」に反応する直感センサー
- Cost Save(コストセーブ):「お得なもの」に反応する直感センサー
- Follow(フォロー):「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応する直感センサー
- Adventure(アドベンチャー):「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応する直感センサー
- Power Save(パワーセーブ): 「買い物の労力を減らせること」に反応する直感センサー
まとめ
インターネットやSNSの登場で複雑化している消費者の購買行動。その心理的・行動的変化のヒントとなるのが、AISASをはじめとする購買行動モデルです。
購買行動モデルにはそれぞれの特徴があるので、まずは自社が行いたいマーケティングに最適な購買行動モデルを見つけることからはじめてみましょう。
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AI時代のWEBマーケティングを制する!
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